「タイムリミットは晩ご飯までって、何かのタイトルみたいだね。映画とかドラマとか」


そこで小説や漫画と出てこない辺りに、普段島田が何を娯楽としているのかが窺える。


「もしもタイムリミットまでに結論が出なかったら、今日の晩ご飯はグラタンね」


ソファーで俯く岡嶋に、キッチンから島田の楽しそうな声がかかる。
かの有名な考える人の像のようなポーズで俯く岡嶋は、島田の声に顔も上げない。無視をしているというよりは、その声が耳に入っていなかった。


「えっと、マカロニ……はあるな。あとチーズもあるっと。具は、玉葱とぶなしめじくらいか。んー……ほんとはシーフードグラタンがよかったけど、この際鶏肉でもいっか。ホワイトソースは雅功くんが作れるからいいよね。小麦粉もバターも牛乳もあるし」


悩む岡嶋を放って、島田は最早晩ご飯用のグラタンの材料を確認している。
勝手知ったるとばかりに開けた冷蔵庫には、岡嶋お手製の作り置き料理が入ったタッパーや、各種調味料、ドレッシングなどが綺麗に収められている。まさしく、料理をする人の冷蔵庫だ。
その流れで野菜室や冷凍庫も開けてみる。どこのスペースにも、食材がしっかりと入っていた。