もう、この、鈍感、バカ!と言いながら、その度にぼふぼふぼふぼふとクッションを岡嶋へ振り下ろす。
幼い頃にも、癇癪を起こしてはこのように、ぬいぐるみやクッションなどを気のすむまで岡嶋に振り下ろすことがあったが、その頃に比べて島田も成長しているので、何度も当たると痛いくらいには力がこもっている。


「美沙」


やめろと言っても聞かないから、代わりにたしなめるように下の名前を呼んだら、驚くほどすぐに、ぴたりと島田の動きが止まった。
表情の方は、まだまだ叩き足りない感が残ってはいるけれど、振り上げられていたクッションは、ぽすんと島田の膝の上に下ろされる。


「……こういう時ばっか名前呼ぶんだから」


ぼそりと不満げに零された台詞は、岡嶋にしてみれば不満を感じる要素がまるでわからない。
どういう意味だ?と問いかければ、不満げな顔のまま睨まれて、大きなため息までつかれた。


「なんでもないですよーだ。どうせ雅功くんには伝わりませんよね。はいはい、わかってましたよ」

「……だからどういう意味だよ」