「ていうかさ、振り出しには戻ってないよ。だって、お互いに合意だったってことを再認識したじゃん。これは大いなる一歩だよ。最早解決したと言っても過言ではないよ」

「……それは過言だろ」


確かに、見ようによっては解決したと言えなくもない。
昨夜あったことは合意だった、決して、岡嶋が意識のない島田を襲ったわけではなかった。となれば、流れ的に島田が結婚を望んでも、それはおかしくはないのでは……。
いや待て、やっぱりおかしい。


「お互い合意したってことは、その瞬間俺は島田と会話をしたってことだよな。にもかかわらず、会話した記憶さえないっていうのはおかしくないか。俺は島田と違って、昨日は一滴も飲んでないんだぞ」


岡嶋の主張に、島田が可愛らしくにこっと笑う。


「あたし達は、心で通じ合ったんだよ」

「……それは、合意したって言えるのか?つまり会話してないんだろ」

「こんなにも長いこと一緒にいて、お互いのことを知り尽くしているんだよ。そんなあたし達の間に、改めて会話して合意する必要なんてないんだよ」

「いや、必要あるだろ」


とんでもない暴論だ。