「ね?気にするのは今更だったでしょ。このマンションのご近所さんに限らず、実家のご近所さんだって、みんな雅功くんの言うところの“世間様”だよ」

「……お前はまた随分と楽しそうに追い打ちをかけやがって」


そう見える?なんて小首を傾げる島田の顔には、笑みが浮かんでいる。
一瞬上げた顔をまた俯かせて、岡嶋は深く息を吐いた。


「それにさ、雅功くんはなんでか知らないけど、まるで犯罪を犯してしまったかのように事態を重く受け止めているけど、あたし“合意だよ”って言わなかったっけ。合意っていうのはつまり、双方の了承を得ているってことだよ」

「……わざわざ説明どうも」


合意だけでも充分伝わるところ、わざわざ舌を嚙みそうな言い回しに変えてきた島田に、岡嶋は皮肉っぽくお礼を返す。
でも言われてみれば、そんなようなことを始めに島田が言っていたようないなかったような。


「え、合意?おま、島田は、いいと思ってしたのか……?」

「合意ってことはそういうことだよね。それとも、そこに至るまでの流れを説明して欲しい?」

「……いや、生々しい話はちょっと」