「なあ島田、俺思ったんだが――」


そんなことは微塵も頭をよぎらない様子の島田が、少し羨ましくもあり、そして……


「やっぱり昨日の夜、何もなかったんだよな?」


かなり怪しくもある。


「……雅功くんもしつこいね」

「俺は、可能性の話をしているんだ」

「可能性の話を何度もし過ぎ。ていうかさ、そんなにあたしと何かあるのが嫌なわけ?」

「あのな、嫌だとかそういう話じゃないだろ」


そう、そういうことではないのだ。
嫌だとか嫌じゃないとか、そんな簡単な話ではない。

万が一にも、本当に島田に手を出してしまったのだとしたら、それはもう二人だけの問題ではなく、両家を巻き込む大問題になると岡嶋は考えている。
それに岡嶋としては、自分を見る島田の目が変わってしまうことが怖くもある。

休みの日くらいゆっくりしたいとか、あんまり心配をかけるなとか、色々思うことはあるけれど、岡嶋は決して島田との時間が嫌なわけではない。
例え島田が鬱陶しく思おうとも守ってあげたい気持ちは今も変わらないし、都合のいい男だと思われていようとも頼られるのは悪い気がしない。

二人で観る映画も、二人で囲む食卓も、一緒に買い物に行くことも、全てが愛おしい時間だと感じている。
それを本人に伝えてウザがられるのは嫌なので、絶対に言いはしないけれど。