「一応あたしにも理想のプロポーズとかあったけど、まあいいよ。現実が理想通りにはいかないことくらい、ちゃんとわかってるから」


そこがわかっているのであれば、結婚とはそんなに簡単な話ではないのだということも是非わかってほしいところ。


「とりあえず、プロポーズではないから安心しろ」


理想があるというからそう言ったのに、安心するどころか島田は大層不機嫌そうに唇を尖らせた。


「雅功くんのバーカ」

「……なんだよ急に」

「とりあえず、昨日のこと話してもいい?」

「いいわけあるか。さっきから急過ぎるんだよ。なんなんだ一体」

「いい加減待てなくなった」


島田のその言葉に、岡嶋はうぐっと言葉に詰まる。
何だかんだといつまでも引き延ばしているのは自分の方で、そのせいで問題解決に時間がかかっていることは確かだ。謝るなら、早い方がいいことは充分にわかっているはずなのに。

そもそも、岡嶋の想像通りのことが昨夜あったのだとしたら、それはもう謝って済む問題ではない。
しびれを切らしている様子の島田に、もう少し時間をくれと頼みたいが、その反面心の奥では、いくら時間を貰っても何も思い出せない予感がしている。
ここまで来ても、断片的にすら昨夜のことを思い出せないのだから、それはもういくら頑張っても思い出せないのではなかろうか。