両親的には、娘や息子の晴れ姿を見たい気持ちはあっただろうが、確かに海外となると気軽に行ける場所ではない。お金も時間もかかる。
最近ではそもそも結婚式を挙げないことも多いと聞くし、現に岡嶋の知り合いにも、式を挙げていない者が数名いる。


「まあ、そうだな。誰を呼ぶかにもよるが、あんまり遠方は……」


考えながらそこまで言いかけて、岡嶋はハッとする。


「待て、話を勝手に進めるな!」


危うく具体的な話をしてしまうところだった。


「今のは、雅功くんの方がノリノリだったと思うけどね」

「ノリノリじゃない!」


余裕の表情でラーメンを啜る島田と、先ほどから押されっぱなしで調子を崩している岡嶋。
いつだって押されるのは岡嶋の方なのだが、今回は昨夜あったかもしれないことを想像してしまう分、いつも以上に分が悪い。


「なんでもいいけど、早く食べないとのびちゃうよ」


この状況でよく吞気にラーメンを啜れるな……と思う反面、そうか島田は昨夜何があったのかを覚えているから、焦る必要もないのかと納得する。