「凄いよね。幾つになっても心は若々しくあり続けたいって言ってたよ。そういう気持ちって大事だよね」


笑顔で料理の工程を説明しながら、フライパンを豪快に煽る姿は、とても還暦間近とは思えないほど若々しい。


「雅功くんもそれくらいの気持ちでいないと、今のままだと倍速で老けちゃうよ」

「倍速……」


年相応であるならまだいいが、実年齢を追い越して老けるのは流石に困る。しかも倍速なんて、考えたくもない。
いただきまーす、と手を合わせてラーメンを食べ始める島田の横で、岡嶋はしばらく動けなかった。

何してるの?のびちゃうよ。と声をかけられ、ようやく岡嶋も箸を掴む。
下から掬い上げるように麺を持ち上げると、あんかけがとろりと絡みつき、尋常じゃない湯気が立ち上る。
それに息を吹きかけてから口に入れた岡嶋だが、それくらいでは冷ましきれなかった熱さが口内を焼いた。


「あっつ!」

「うん!熱々で美味しいね。ごま油がいい感じ」


岡嶋の一口目は、とにかく熱いことしかわからなかったのだが、島田は熱さだけでなくちゃんと味わってもいたらしい。