「……俺の立場になって想像してみろ。一回りも年下の、それも子供の頃から付き合いのあるやつに、もしかしたら自分がやらかしてしまったかもしれない話を聞かされる気持ちを」

「全く知らない誰かに聞かされるよりはマシ」


なるほどそう来るか。確かに考え方は人それぞれなのだが、“俺の立場になって”と言ったはずなのに、もしや島田は聞いていなかったのだろうか。


「なんにしても、いつまでも引き延ばしたって過去は変えられないんだよ?だったら、その過去をしっかりと受け止めて、よりよい未来を二人で切り開いていこうよ」


どこかで聞いたことがある台詞だと思ったら、今は亡き岡嶋の祖父が言っていた台詞だったのを思い出した。
確かそれは、祖父が祖母にプロポーズした時の台詞で、一体二人の過去に何があって、そんなドラマのような台詞と共に結婚するに至ったのかは、いくら訊いても教えてもらえなかったのだ。

幼い頃に聞いた祖父のプロポーズの言葉まで持ち出して来るだなんて、これはやはりそういうことなのだろうか……。
ここに来てもう一度昨夜の記憶を掘り越してみるが、掘っても掘っても肝心な記憶が出てこない。
でもそうだよな、いい加減にしないと誠実さにかけるよな、謝るにしたって早い方がいいに決まって――とごちゃごちゃ考えていた岡嶋は、不意に目の前に現れた島田の顔にぎょっとした。