「雅功くん、お詫びにクッキーあげるから機嫌直して」


テーブルの上に広げていた箱からバニラクッキーを一つ取って、島田が岡嶋の目の前に持ってくる。
無視してやろうと思っていたのだが、あまりにも煩わしく目の前でクッキーが動くので、岡嶋は仕方なくそれを指で掴んだ。


「さて、じゃあ雅功くんが仲直りのクッキーを受け取ったところで、いい加減真面目な話でもしますか」


そう言いつつも、島田も箱からクッキーを一つ取って吞気に口に咥える。


「へいうは、まはとひふんあひゃんとはなひをひいてふえないはら、へんへんすすまないんあよえ」

「……なんて?」


なぜクッキーを咥えながら喋るのか。


「だから、雅功くんがちゃんと話を聞いてくれないから、全然進まないの」


初めから飲み込んでから喋ればいいものを、まるで聞き取れなかった岡嶋が悪いと言わんばかり。


「いい加減思い出すの諦めたら?あたしから聞いた方が絶対早いよ」


そんなことはわかっている。わかったうえで聞かないのだから、そちらもいい加減察して欲しい。


「いいか、島田の口からそれを聞くのに、俺には相当の勇気と覚悟が必要なんだよ」

「ここまで引き延ばしたのに、まだ勇気も覚悟も持ててないの?」


またしても、返す言葉がない。今日は、こんなことばかり続いている。