「畳っていいよね。お祖母ちゃんの家に行くとさ、足伸ばして床に座るのいいなーって思うもん。あと畳の匂いってなんか落ち着くし。家を建てるなら、小さくていいから畳の部屋が欲しい」

「……待て、なんで島田も来るんだ」


楽しそうに畳の話をしながら、島田がクッションを抱えて岡嶋の隣にやって来る。これでは、離れて座った意味がない。


「あたしも、足を伸ばして座りたくなったから」

「じゃあここ譲ってやる。俺はそっちに……」


島田が移動したことによって空いたソファーに座ろうと岡嶋が腰を浮かせると、すかさず島田が服の裾を鷲掴む。


「逃げることないでしょ。傷つくんですけど」

「いや、逃げるとか別にそういうことでは……」

「じゃあどういうことよ」


“まさにい、なんで行っちゃうの!”と涙目で服の裾を鷲掴んでいた、幼い頃の島田の姿が脳裏をよぎる。
今は涙目ではなく不機嫌そうな表情なのだが、岡嶋がその手を振り払えたことは未だかつて一度もない。


「……わかった。わかったから、せめてもう少し離れてもらうことは――」

「まさにい、あたしのこと嫌い?」

「……その顔やめろ」