「赤ちゃんの頃から付き合いがあるあたしに、そんな下手な誤魔化しが通用すると思った?」


返す言葉もない。
島田が嘘をついても岡嶋には通用しないように、岡嶋の誤魔化しもまた島田には通用しないのだ。なにせお互いの癖を知り尽くしてしまっている。

だからこそ岡嶋は、島田から昨夜の話を聞くことを躊躇っているのだ。
だって、島田が嘘をつくときの癖はわかっているし、仮にいつもの癖が出なくても、付き合いの長さからくる直感で嘘を見抜く自信もある。

それなのに今回は、その直感がまるで働かないのだ。もちろん、嘘をつくときの癖だって出ていない。
そうなると、自分が本当にやらかしてしまった説が濃厚になり、真実を聞くことが恐ろしくなる。


「まあ、たまには床に座りたいってのは、わからなくもないけどね。あれでしょ、フローリングで椅子に座る生活ばっかりしてると、たまには畳の部屋で足を伸ばしたくなるみたいなそういうことでしょ?」


そういうことなのか?と一瞬疑問が頭をよぎったが、それで島田が納得するならそれでいい。正直ぽろっと口から出ただけで、深い意味を持って言ったわけではないから。