「そういうんじゃないんだよなー。雅功くんは、確認の意味を込めてさらっと見てるだけでしょ?あたしは、それを熟読したうえで更に工程をいちいち見ながらじゃないと作れないんだから」

「そうやって覚えていくもんだろ、料理って」

「道のりは果てしなく長い……」


ため息で湯気を飛ばしつつ、島田はカフェオレを一口。いつかブラックのコーヒーを美味しく飲めるようになりたいなー、なんて思いながら隣を見て


「ところで雅功くんは、どうしてそんなに離れたところにいるの?」


島田が座っているソファーから離れた床の上、手を伸ばせばギリギリテーブルに手が届くかという場所に、クッションを置いて座っている岡嶋に問いかける。


「……まあ、その……なんとなく」

「ソファーに座りなよ。空いてるんだから」

「たまには床もいいかな、と……」

「本当は?」


ジト目で問い詰められ、岡嶋は言葉に詰まる。
確かに、いつもはソファーに島田と並んで座っているのに、突然床に座ったのは不自然だった。