「あたしは在学中に式を挙げちゃっても全然ありなんだけど、雅功くんはどう思う?」

「どう考えたって卒業してからだろ。今は大学生活に集中……じゃなくて!話を進めるな!!」

「ええー、今のは雅功くんがノリノリで乗ってきたんじゃーん」

「ノリノリじゃない!」


どちらかというと、流されてしまっただけだ。


「本当はね、ハワイとか沖縄とか、景色のいいところで式をするのに憧れるんだよね。和装だったら、京都とかもいいなあー」


そんな調子で結婚式の話、新婚旅行の話、お互いの両親への挨拶の話、そんな話を好きに喋り倒したあとで、島田は一泊置いて楽しそうに笑って言った。


「さて、雅功くん、具体的な話も出たところで、いい加減覚悟は決まった?」


覚悟などそんなにすぐには決まらないし、“責任”ってやはりそういうことなのかと頭を抱えたくなるのを堪えて、岡嶋は絞り出すようにして答えた。


「……頼む、とりあえず一発殴ってくれないか。そしたら、昨日のことも少しは思い出せるかも」


目を見開いて驚いた島田は、それからまたすぐ笑顔に戻って


「嫌でーす」


楽しそうに笑ってそう言った。