「待てこら!!そういうことを軽々しくするな」


慌てて顔ごと逸らす岡嶋に、島田からは「ええー」と不満げな声。


「でもほら、見たら思い出すかもしれないじゃん」

「普通に考えて、見て確かめるわけがないだろうが!!」


幼い頃は、お互い何の躊躇いもなく目の前で着替えをしたりもしたものだが、“今も”そうなわけではない。
島田の方は今でも何の躊躇いもなく着替えようとするが、岡嶋の方がそれを全力で止めている。

ひょっとしてこいつは、まだアルコールが抜けていないのか……?と思いながら、岡嶋は逃げるように席を立つ。
こんなに爆速で朝食を平らげたのはいつぶりだろうか、というかそもそも今までの人生で一度でもあっただろうかと思いながら、岡嶋が向かった先はキッチン。

本当に爆発しそうなほど大きく脈打っている心臓を落ち着かせるため、コーヒーの用意をする。
まずは、いつもの電気ケトルではなく、注ぎ口が細長いタイプのポットにお湯を沸かす。
こういう時はパパっと作れるインスタントよりも、じっくりと時間をかけるドリップタイプの方がいい。