「だってほら、雅功くんは“責任”取らないとダメでしょ。あたしに」


ずどんと重たく胸に響く、“責任”という言葉。途端にトーストの味がしなくなって、というかトーストどころではなくなった。


「思い出した?」

「……いや、その、別に忘れていたとかそういうことではなくて、なんていうかだな、あの…………」


現実逃避したい気持ちは確かにあった。でも逃避してはいけない問題であることもわかっていた。
だからこそ、まずは朝食を腹に入れ、脳みそをしっかりと起動させたところで考えようと思っていたのだ。いたのだが……――。


「雅功くんの長い長ーい現実逃避は、いつ終わるのかなって思ってたよ。ひょっとして、逃避し過ぎて忘れたかなって」


忘れるつもりはなかったのだが、頭からすっかり飛んでしまっていたのは事実なので、何も言えない。言えることがあるとすれば、“すまん”“わるい”という謝罪の言葉だけだ。


「それで、あたしからの事細かな説明を聞く覚悟は出来た?」


何でもないことのように島田が放ったその言葉に、岡嶋はぎょっとする。