「待て、やめろ。俺をこれ以上混乱させるな」

「任せて。雅功くんが理解するまで事細かに説明してあげるから」

「それもやめてくれ」


そんな意味ありげな言い方をされて、夜に同じベッドで何をしていたかなんて、聞くのは怖過ぎる。それも、一回りも年下の幼馴染みの口からだなんて、なおさらに。


「いいんだよ、雅功くん。今更恥ずかしがらなくても」

「……今更、今更?……いやまさかだろ、まさかなんだよ。でもまさかそんなわけ……」


混乱し過ぎて頭を抱える岡嶋の袖口を掴み、島田がくいくいと引っ張る。
ちょっと今はそっとしておいて欲しいのだが、仕方なく顔を上げると、なぜか笑顔で両腕を広げる島田がいた。


「……何だ?」

「ハグだよ。抱きしめてみたら、昨日の記憶が呼び起こされるかもよ」


しばし島田を見つめて固まっていた岡嶋は、ややあってまた頭を抱えるポーズに戻る。


「……それで思い出せたら苦労しない」

「ちょっと!やる前から決めつけるってどうなの。とりあえずやってみたっていいじゃん」

「とりあえずでハグなんか出来るか」

「ハグは挨拶だよ?」

「ここは日本だ。日本にそんな文化はない」


頭固いんだから、という不満げな呟きを聞き流し、岡嶋は頭を抱えたポーズのままで考える。
まあどんなに考え込んだところで、昨日の記憶がふと蘇ってくることはないのだけれど。