「タクシー代だってバカにならないんだからね、もう」

「だから、前もって連絡寄越せば迎えに行くって言ってるだろ」

「迎えに来たらそのまま家に送ってくじゃん」

「当たり前だろ」


家に送らずしてどこに連れて行けばいいというのか。
親同士がとても仲が良く、家が近いこともあって、幼い頃から何かと一緒に過ごすことが多かった幼馴染みの二人だが、実は一回りほど年が離れている。

現在島田は花の女子大生、岡嶋は食えない部下を持つ社会人。そうなると必然、岡嶋の中には、自分がしっかりしなければ、島田に何かあっては親御さんに顔向けできないし、自分の親にもぶっ飛ばされるという感覚が芽生える。


「雅功くーん、ココア飲みたい。それかミルクティー。甘いやつだったらカフェオレでも可ー」

「……あのな、今何時だと思ってるんだ。酔っ払いはさっさと支度して寝ろ」


ええー、と不満げな声を上げる島田は、充分に暖まったのか、コートやマフラーを脱いでいく。
コートの下に着ていたのは、黒に近い紺色のワンピースで、後ろの首元にリボンがついており、スカート部分には小花の模様がプリントされているもの。
何度か着ているのを見たことがあるが、確か島田お気に入りの一着だったはずだ。