「……つまりお前は、その、田中さんだったか?を、好きになったってことなのか?」


そこに好意があれば一線を越えても問題ないということではないが、この顔がいいので大層モテる割に浮いた噂が一切聞こえてこない部下が、遂に誰かを好きになったのかどうかが純粋に気になった。


「さあどうでしょう。それもまた、岡嶋さんのご想像にお任せしますよ」

「お前なあ」


しかしこの部下は、簡単には教えてくれない。
だから岡嶋は、いい加減にしろよとため息をつく。


「そういう岡嶋さんは、年下の彼女と上手くいってるんですか?」


田辺の問いかけに、岡嶋は飲みかけたコーヒーを吹き出しそうになった。


「だから、彼女じゃないって言ってるだろ!ただの幼馴染みだ」

「でも、休みの日に二人で映画観に行ったり、お家デートしたりしてるんですよね?」

「誤解を招くような言い方するな。二人で映画なんて言うが、それは映画館に行く足が欲しくて呼ばれるだけで、お前が“お家デート”なんて呼ぶそれも、大学から近いって理由で家に帰るのが面倒くさい時なんかに来てるだけだ」