そういう展開になっていなければいいと願っていただけに、真帆の動揺は激しい。
それが、うろたえる真帆を見てまた笑っている田辺の悪い冗談であればいいと願うが、ここで問い質しても、田辺が正直に答えるとは思えない。
高校時代は薄い関係性だった田辺のことを真帆はよく知らないが、この短い時間で、大変いい性格をしていることはよくわかった。


「ちょ、ちょっと一回離れてもらってもいいかな。あと、早く何か着て、お願いだから」


気持ち的にはぐいぐいと、でも実際にはあまり触れるのも躊躇われてちょいちょいと、真帆は田辺の鎖骨辺りを押す。


「今更恥ずかしがることないでしょ。昨日ベッドを共にした仲なんだし」

「べ、ベッドをともっ!?」

「それとも、そのちょんちょん触ってるのって、実はさっきの続きを催促してる?もう、口ではいらないなんて言いながら――」

「違うから!!」


そう言われると指先が触れているのも恥ずかしくなって、真帆は勢いよく腕を引く。
その反応を見て、田辺は可笑しそうに笑った。
そして笑いながら、ようやく近付けていた上半身を引いたので、二人の間には適切な距離が生まれる。