何を言っているんだこの男はと最早言葉も出てこない真帆に、田辺が笑顔で続ける。


「ちなみに、新婚旅行で早速二人で旅行に行く予定なんだけど、田中さんはどこに行きたい?」


友達と旅行に行く予定なんだけど、どこがいいと思う?と軽い相談を持ち掛けるような気軽さで、新婚旅行の話をしている田辺が恐ろしい。


「……田辺くんと旅行なんて行きませんけど。ていうか、そもそも結婚しないから!いやそれよりも、まずは昨日のことをいい加減説明しろ!!」


掴みかかって締め上げてやろうかと思ったが、生憎とプリンで手が塞がっていて出来なかった。ただ、無駄に距離を詰めただけで終わった。


「田中さん、それはキス待ち的なやつですか」


両手が塞がった状態で距離を詰めたのがあだとなって、田辺の謎のポジティブが発動してしまった。


「ちがっ、これは!いい!!?ちょ、ちょっと待って、違うから!!!」

「田中さんは照れ屋だね。でも大丈夫、そこは男の俺がバシッとリードするから」

「そんなのしなくていい!!あ、ちょっ、やめ!離し――」


プリンのカップを持ったままの手が腰に回って、ぐいっと引き寄せられる。
あわあわする真帆を見て、田辺は至近距離で楽しそうに笑った。