「ああ……手作りプリンって感じの味がする。素朴な感じのお家プリン」


それは果たして褒めているのだろうか……。とりあえず真帆としては、道具が揃っていない割には善処した方だと思う。


「そうだ、田中さん。さっきの話の続きだけど」


さっき?さっきとはどのさっきだ。
スプーンを咥えて首を傾げる真帆に、田辺が「なんということでしょう……」なんてわざとらしく驚いてみせる。


「俺と新しい恋を始めようって、すっごくいいこと言ったじゃん、俺」


自分で言うか。


「ああ、あの鳥肌立ちそうなくらいさっむいやつね。今時ドラマでも聞いたことないような」

「少女漫画ではありそうじゃない?」

「少女漫画なめるな」


田中さんに怒られたーと嘆いた後で、プリンを一口。「うん、うまい」と呟くあたり、直前の嘆きには大して心がこもっていないとみた。


「まあとりあえずそういうわけだからさ、これからよろしくね田中さん」

「……ちょっと待って、私は今何をよろしくされたの」

「二人の素敵な未来に、かんぱーい」


腕を伸ばした田辺が、プリンが入ったカップを真帆のカップに軽く当てる。