カラメルといえばプリンの下にあって、ひっくり返してお皿に出した時に上に来るようなイメージだが、昨今はそもそもカラメルの入っていないプリンも多い。
真帆個人としては、プリンにカラメルは付き物だと思っているのだが、真帆の知り合いには、カラメルのないプリンが好きだという人もいる。

真帆が以前働いていた店では、どちらにも対応出来るようにカラメルは別添えにしていた。
その時の癖もあって、カラメルはプリンの下に敷かずに別で作っているだけで、別に忘れていたわけではない。


「ところで田辺くんさ」


鍋に砂糖と水を入れたところで、真帆は火を点ける前に田辺の方を見る。
砂糖は焦げやすいので、ここからの作業は集中したい。だから、その前に確認したかった。


「全部嘘なんでしょ」


真帆の言葉に、「何が?」と首を傾げる田辺。
問い返しているくせに、その顔には笑みが浮かんでいるので、きっと何のことだかわかったうえで問い返しているのだろう。本当に性格がよろしくない。
だが、ここでイラついて声を荒らげるとダメなのだ。そうなると、田辺のペースに持っていかれてしまう。この短い時間で、真帆も学んだ。