「未来の奥さんが、俺のために作ってくれた初プリン」

「……その呼び方、やめろって言ってるでしょ」


混ぜ終えた卵液は型に注がなければいけないのだが、この家にプリンの型などないし、ケーキ型を代用しようにもそれもない。仕方がないので真帆は、電子レンジ対応のマグカップを並べる。
こし器はないがザルがあったので、キッチンペーパーを敷いて、それを通してカップに卵液を注いでいく。

注ぎ終わったら電子レンジに並べて、あとは温めるだけ。
田辺の家にあるのは、宝の持ち腐れと言ってもいいオーブンレンジなので、付属の天板に水を張って蒸し焼きにすることも出来るのだが、今回は簡単さ重視でいく。

道具も揃っていないし、バニラエッセンスも入れたかったのにないという、ないものが多い状態で作っているので、工程的にも蒸すよりレンジでチンが丁度いい。
レンジにマグカップを並べてスイッチを押したところで、田辺から「ねえねえ、田中さん」と声がかかる。


「あれ入れないの?ほらあれ、茶色いやつ」

「なんて雑な……」


呆れたように呟きながら、真帆はコンロに小さめの鍋をかける。