目を開けてまず感じたのは、鈍い頭の痛み。次いで口の中に残るアルコール。
薄く開けた目で天井をぼんやり眺めながら、田中 真帆(たなか まほ)は昨日のことを思い出してちょっぴり後悔していた。

昨日は駅前の居酒屋で高校の同窓会が行われたのだが、前日までは、お酒はほどほどにして久しぶりに会うクラスメイト達と会話を楽しむ時間にしようと思っていたのに、気がついたらかなり飲んでしまっていた。
なんとなく勧められるままに飲んでしまったというのもあるし、飲み放題だったから杯を重ねることに罪悪感がなかったこともまた原因の一つ。

けれど、お酒の強さは人並み程度、ちょっと度数の高いものを飲めばたちまち酔ってしまうような人間が、勢いに任せてグイグイいったらまあ当然のように潰れる。
そんなわけで真帆は一次会の途中で記憶が怪しくなり、寝ているのか起きているのかわからないような状態で店を出た。
途中で立っているのも辛くなり、道端にうずくまったことはギリギリ覚えている。そこで誰かに声をかけられ、堪えきれなくなって盛大に吐いたことも薄っすらと。

でもどうにか思い出せたのはそこまでで、そのあとのことは夢か現実か判然としないというか、悲しいほどに記憶が曖昧だ。
それ以上考えようとすると頭の痛みが邪魔をするので、ひとまず真帆は思い出すことを諦めて、この鈍い頭痛がもう少しマシになるまでもうひと眠りしようと目を閉じる。