あの、入学式の時に教室まで案内してくれた人だ。

「あれ、君は入学式の時に迷子になってた子だよね」

覚えてたんだ。

「あの時はありがとうございました。それで名前を聞いていなかったと思って…」

「そうだったね。俺は二年の中条春樹。君は?」

「秋本沙月です」
中条先輩は、「よろしくね」と言って笑った。

その時、どきんと心臓が跳ねた。

「あらあら、どうしたの?」

保健の先生の伊藤先生が戻ってきた。

「陸上部の長距離で走ってたら転びました」