「ホントですね。ここ、先輩の家ですか?」

「いや、俺の友達の家だ」

表札をみると、佐賀と書かれていた。

佐賀ってあの陸上部の…

「こいつ、同じ学年で陸上部だったんだけど、ずっと学校にきてないんだ」

俺はその原因を知っている。

「夏の大会は、あいつにも見に来て欲しいんだ。そのためにも、絶対に選抜メンバーに選ばれたい」

それは、自分はもう走れるということを佐賀先輩に見せて、安心して欲しいからだ。

「先輩なら大丈夫ですよ。きっと、選抜メンバーに選ばれます」

俺はどうして、この人の応援なんかしているんだ。

この人のせいで今、落ち込んでいるというのに。