俺は、佐賀の家から学校に帰ってきた頃には、もう七時をすぎていた。

「月島先生。お帰りなさい。どうでしたか?」

廊下で伊藤先生に声をかけられた。

「佐賀本人と話して、退学届も受け取りました。話すことができてよかったです」

「もっと、早く気づいてあげていれば、止められたのかな。こんな結果にならずに済んだかもしれないのに」

伊藤先生が悔しそうな声で言った。

「佐賀自身が決めたことだ。俺も何かできることがあったのかもしれないのに、何もできなかった」

「でも月島くんは、いじめの主犯の生徒から話を聞いたり、そのほかのクラスの子達からも話を聞いたりして、行動を起こしていたでしょ?高校の時、私のことだって助けてくれた」