だから、話す気になったのかもしれない。

「私、親とうまくいってなくて。それでこないだも怒られたんです。家にもあまり帰りたくありません」

店員さんは、私の話を黙って聞いてくれていた。

「お母さんが教育熱心で、小さい頃からずっといい成績を取るように言われてきました。上にお姉ちゃんがいるんですけど、交通事故にあって、意識が戻ってないんです。お父さんも仕事が忙しくてなかなな家に帰って来れないし」

初対面の人にこんなことを話したのは初めてだった。

「すみません。いきなりこんな話して。迷惑ですよね」

「そんなことないよ」

手を握られた。

「あなたはどうしたい?」

「私は、お母さんとちゃんと話をしたいです」

「じゃあ、今思ってることをお母さんに伝えたらどうかな?ちゃんと話せば、お母さんもわかってくれるよ」