水野先生は絶句しているようだった。

「すみません。父のせいであなたの大切な人たちを傷つけてしまいました」

俺は立ち上がって頭を下げた。

「…それは、お前自身が悪いわけじゃない。警察に調べてもらったら、真緒をひいた車は、車検に出したばかりで、車に不備が見つかったそうだ。
ブレーキ痕の跡もあって、必死に止まろうとしていたようだったと聞いた。
だからあの事故は、お前の父親のせいではないし、お前が謝る必要もない。菜緒も本当は誰も悪くないこともわかっている。ただどうしようもない感情をどこにぶつけたらいいのかわからないだけだ」

俺は、ゆっくり頭をあげた。

「辛いことを話してくれてありがとな」

水野先生は、そう言って笑ってくれた。