「それなら、どうして、宮沢は先生に対して冷たい態度を取っているんですか?」

水野先生は少し複雑な顔をした。

「真緒が事故に会った時、一緒にいたのが俺だった。真緒だけが怪我をして、俺は無傷だった。菜緒に言われたんだ。なんでお姉ちゃんを助けてくれなかったの?って。あいつにとって、家での唯一の味方は真緒だけだったからな」

味方?どういうことだ?

水野先生は続けて言った。

「あの二人の家は、父親は仕事が忙しくてほとんど家にいないことが多い。母親は専業主婦だったが、教育熱心でな。成績がよくないと、ご飯を食べさせてもらえなかったり、殴られたこともあったらしい」

虐待じゃないか。

「真緒は、もともと勉強が得意で、そんなことはあまりなかったようだが、菜緒の方は勉強があまり得意ではなくて、よく体にあざがあった。高校受験の時は死に物狂いで勉強していた。俺もそのことは知っていたから、勉強を見てやったりもした。でも、真緒が事故にあってからはそんなこと関係なくなってたみたいだったけどな」