沙月は隣で息を切らしていた。

「お前ほんと走るの遅いな」

「陸上部入ってた人に追いつけるわけないじゃん」

沙月は少し拗ねたように言った。

俺は中学校の時に、県大会で優勝するほど足が速い。

「高校でも陸上部に入るの?」

沙月に尋ねられた。

「そのつもり。走るの好きだし、沙月はなんか部活入るの?」

「まだ考え中」

と答えた。

沙月も何か部活に入れば、友達も増えるのに。

俺たちが通う高校には、ほとんど同じ中学校出身の奴はいない。


沙月にとっては気が重いかもしれない。


『まもなく停車いたします。お忘れ物がないようご注意ください』