合宿での夕食は、夏らしくバーベキューだった。

「去年の反省から、肉は多めに準備しましたよ」
「本当だ。ありがとうな。快人、お前はトング持つなよ?」
「どうしてですか、瑠可」
「去年の反省だよ」

 どうやら快人先輩は、壊滅的に料理ができないらしい。バーベキューなんて乗せて焼くだけなのに、去年は一体どんなことがあったんだろう。

「はい、これ優衣ちゃんのね」
「ありがとうございます!」

 手際よく肉を焼いていくのは祥太先輩だ。心なしか、肉の良い部位を選んでお皿に乗せてくれている気がする。これも後輩特権ということだろうか。

「うーん! 美味しい!」
「優衣は本当に旨そうに食べるな」
「瑠可先輩こそ、いい食べっぷりですね!」
「増やしたといっても限りがありますから、今年は一人占めしないでくださいね? あと、優衣さんのことも!」
「そうだそうだ! 花火買うのだって、瑠可ったら抜け駆けしようとしてたでしょ!」
「抜け駆けって人聞き悪いぞ祥太! それに、結局四人で行ったんだからいいじゃねーか!」

 ぎゃあぎゃあと先輩たちが騒いでいる間に、あたしは肉や野菜を楽しんだ。こうして四人で居ることにすっかり慣れたな、なんて思いながら。
 食べ終わった後は、いよいよ花火だ。四人でお金を出し合って、どっさり買い込んできた。

「火傷しないよう、気をつけて下さいね! 特に祥太、ぶんぶん振り回さないこと!」
「それも去年の反省ですか? 快人先輩」
「そうですよ。彼ったら、危なっかしくて……」

 あたしは、中くらいの長さの手持ち花火を手に取った。まずはスタンダードなものから始めたかったのだ。

「わあっ……!」

 パチパチと音を立て、火花が弾けていく。その様子を、あたしはまばたきもせず見つめていた。花火なんて本当に久しぶりだ。

「見て見て! 凄くない!?」

 叫び声の方を見ると、祥太先輩が三つ一気に火をつけて振り回していた。確かに危険だが、楽しそうだ。

「もう、祥太ったら子供ですねぇ……」

 快人先輩は呆れてもう止めなかった。

「よーし! ネズミ花火行くぞ!」
「きゃー! 瑠可先輩、こっちに向けないで下さいよー!」

 あれだけ用意していた花火も、先輩たちが無茶苦茶な使い方をするせいで一気に無くなってしまった。
 最後の締めは、やっぱり線香花火だ。

「なんだか、切ない気分になっちゃいますね」
「まあまあ優衣、夏はまだ始まったばかりだぞ?」

 火花に照らされた瑠可先輩の顔を見た。目を細め、にこやかに笑ってくれている。

「それもそうですね。あたし、この夏はもっと執筆したいです!」
「それもいいけど、おれとの思い出ももっと作ろうよ!」
「分かりました、祥太先輩!」

 あたしがそう言うと、またずるいやらずるくないやらで口論が始まった。こんな夏も、良いものだ。あたしは心の底からそう思っていた。