ファミリーレストランに着いた。あたしの隣に誰が座るかでやや揉めたが、じゃんけんで祥太先輩になった。というか、いちいちそんなことで勝負しないでほしい。

「優衣ちゃん、どれにするー?」

 あたしは祥太先輩と一緒にメニューの冊子をめくった。こういうとき、あたしは長いこと悩みがちだ。

「僕はオムライスにしますね」

 快人先輩が言った。すると、瑠可先輩がため息を漏らした。

「お前、そんなんで足りるの? 俺は断然ミックスグリルにするけど」

 瑠可先輩は、どちらかというと痩せている方だが、大食いなのはいつものお菓子のチョイスでよく知っている。

「おれもミックスグリルにしようっと!」
「おい祥太、真似すんなよ」
「かぶっただけだし!」

 どうしよう、三人とも決めてしまった。あたしはうーんと唸りながらメニューをパタパタと行ったりきたりさせた。それから、良いことを思いついた。

「あたしもオムライスにしようかな。快人先輩の真似です」
「おい快人! ずるいぞ!」
「何がずるいんですか、祥太。隣に座れたんだし五分五分でしょう?」

 あたしの選択は、いちいちこの三人を刺激するらしい。それを相手にしていたらキリが無いので、あたしはもうタブレットを操作して、四人分のメニューとドリンクバーを入力してしまった。

「優衣、何飲む? 俺が取ってくる」
「ありがとうございます、瑠可先輩。ウーロン茶で」
「あっ、先越された! 瑠可、おれはコーラ持ってきて!」
「自分でやれよ」
「冷たいなぁ。じゃあおれが快人のやつ持ってくる。何がいい?」
「僕はオレンジジュースで」

 というわけで、あたしと快人先輩が席に取り残された。

「優衣さんと同じものを食べられるなんて嬉しいですね」
「そ、そんなことくらいで喜ばないでください! 決まらないから真似しただけですし!」
「真似されたのも嬉しいですねぇ」

 快人先輩のメガネの奥が本当に嬉々として輝いていた。そんな目をされては、あたしも困ってしまう。四人分のドリンクが並べられ、全員が席に戻ったところで、あたしは素直な感想を口にした。

「それにしても、先輩たちって仲良いですよね」

 ケンカするほど何とやらというやつだ。

「はぁ? そうか? 仕方ねぇからつるんでるだけだし」

 瑠可先輩が真っ先に否定してきた。

「おれは文芸部、心地良いよ! 優衣ちゃんは?」
「あたしも心地いいですよ、祥太先輩」
「そう思ってくださって良かったです。ほら、一応僕、部長ですし……」

 快人先輩は、はにかみながらオレンジジュースを飲んだ。瑠可先輩はまだまだ不満げな顔をしているが、きっとあれは照れ隠しなのだろうとあたしは思った。
 それから、順々に料理が運ばれてきて、先輩たちとやかましく会話をしながら昼食を終えた。