「――さてと。メノウはなに食べたい?」


「…………へ?俺?」


「他に誰がいんの」


シャロンはまた、ツボにハマったらしく笑いをこらえている。


思わずむくれてしまう。そもそも最初から説明すれば済む話なのだが、それをしないのがシャロンなのである。


シャロンは料理が上手い。見た目から味からすべてにおいて完璧で、とにかく誰の胃袋でも掴んでしまう。でも誰にも興味はないらしく、いつも笑顔で流している……おそろしい。



「……チェリーパイが食べたい」


「了解、オレのお姫様」



シャロンとレイチェルおばさんの流れるような交渉を見守り、買い物を終えた帰り道――シャロンの両手は、チェリーパイを作るための材料でふさがっていた。店から転移魔法で送ってもらえばいいのに……と不思議がる俺にシャロンは。