◯学校・教室

◇放課後


澪「はぁ……まさか忘れ物しちゃうなんて」


帰ろうと思い校舎を出たはいいものの、教科書を忘れてしまったことに気がつき戻ってきたところだった。


階段を上りクタクタになっていると……誰かが入ってきた。


180は超えている長身に整った顔立ち……金髪に灰色がかった青色の瞳。おまけにピアスがたくさん空いている。


澪(確かあの人は……イケメンな不良って有名な、綾野くん……?ものすごく怪我してるけど……)

澪「あ、あの……!綾野くん、怪我大丈夫?」

蓮夜「は……?関係ねぇだろ関わってくんな」

澪「そういうわけにもいかないよ……!すごい怪我だし」

蓮夜「あ?こんぐらい大したことねぇだろ」

澪(な、なぜそんなに怒っている……!?)



気に障ってしまったのか、と少し焦る澪。


澪「私でよければ手当しようか?」

蓮夜「いい。どうせ下心しかねぇんだろ、お前だって所詮金目当て——」

澪「ううん、私いい人だって思われたいだけだから!」


綺麗さっぱりそう言った澪に、目を丸くする蓮夜。


澪「……えっ、なんか変なこと言った?」

蓮夜「……いや、ちがう。お前みたいなやつに初めて会ったから驚いただけだ」

澪「そ、そっか……」

蓮夜「……手当て、やっぱり頼んでいいか?」

澪「!うん!もちろん。ちょっと待ってね」


カバンの中をガサガサ漁る。


澪「あった!」


包帯などなどを取り出して、蓮夜に近づいていく。


蓮夜(……不思議だな、コイツには近づかれても嫌な気がしない……下心がないからか?)

澪「……ん?なんか私の顔変?」

蓮夜「あ?顔なんて見てねーよ」

澪「あはは……そうだよね」


てきぱきと手当を完了させた澪。


澪「じゃあまたね、綾野くん。怪我には気をつけてー」

蓮夜「……ああ」
  (またね、か)


蓮夜に手を振り、教室から去って行った澪だった。


◯帰り道

澪(……そういえば、今日お母さんに帰ったら大事な話があるって言われてたな……)


「なんだか嫌な予感がする」と悪寒がしていた。


◯澪の家


澪の母「と、いうことで……この人と、再婚することになったわ」

澪「え、えっと……」
 (再婚?)


母子家庭であった澪。母親が頭がよく、大手企業に勤めていたこともあって不自由は特になかった。

そんな中で突然告げられた、再婚。

焦りが隠せなかった。

それに……その、再婚相手の後ろにいる背の高い青年。


澪「なんで、綾野くんがここに……」

蓮夜「こっちが聞きてえよ」

澪の母「あらまぁ!2人とも知り合いだったの?」


手を合わせて嬉しそうにしている。


澪「う、うん……クラスメイトだよ」

蓮夜の父「もしかして、君が噂の澪ちゃんか……」

澪「噂の?」

蓮夜の父「ああ、蓮夜が——」

蓮夜「おい親父!」

蓮夜の父「ああすまないすまない、忘れてくれ澪ちゃん」



あははと苦笑いを浮かべる蓮夜の父親。

澪(親子揃って背が高いんだな〜……)


澪も澪の母親も、身長150せんちとやや小さめだ。

一方あちらは身長180超えなので、親子揃って見あげていたのだ。


澪の母「ってことでこれからみんなで暮らしていくわけだから、よろしくね!」

澪「う、うん……」

澪(みんなで暮らす……ってことは、引っ越すってことなのかな)


たくさんの思いれのあるこの家を手放すのは、とても苦しいことだった。


蓮夜「……俺、こっちに住みたい」

澪「えっ……?」

蓮夜「なんか居心地良さそうだし」

澪の母「まぁまぁそれは嬉しいわね!じゃあ姉弟の中を深める意味でも2人でこっちに住んだらどう?」

澪「えっ」
蓮夜「え?」

蓮夜の父「確かにそれはいいなぁ!そうしよう。じゃあ母さん、行こうか」

澪の母「ふふっ、そうね〜!じゃあね、2人とも!」


腕を組んで行ってしまったふたり……。


澪「ご、ごめん綾野くん……気遣ってくれたんだよね?」

蓮夜「っ!あ?そんなわけねーし。ってかお前こそよかったのかよ、俺と同居するって」

澪「う、うーん……」
(ちょっと怖いところもあるけど……)

澪「そこまで悪い気はしないかな」

蓮夜「っ……!!そ、そうかよ」


ぶわっと顔を赤くさせる蓮夜。

数十分後、蓮夜の家から荷物が送られてきたとか。


澪(と、言うことで……不良くんとの同居生活は、唐突に始まってしまったのでした)