『ずっと桃音ちゃんと、桜をみたい。この土地に家を建てて……』

 一緒に住まない?って訊きたかった。けれど久しぶりに再会して、いきなりそんな風に言われても迷惑だろう。

『私、この桜の近くに、住みたいな』
 予想外に、彼女からそう言ってくれた。
『……ここに家を建てたら、一緒に住む?』

 さっき閉じかけた言葉を彼女に伝えた。
 彼女は頷いて、桜に似合う笑顔を見せてくれた。

 一緒に住むためにはやることが沢山あるだろう。

 まずは、彼女の一人旅をすごく心配して反対していたらしい、彼女のお母さんに伝えないと。というか、お付き合いしてるわけでないのに一緒に暮らすとか絶対に反対されそう。

 お付き合い……もう、言ってしまおうか。

 僕はごくんと唾を飲んだあと、勇気を出して『僕と、恋人になりませんか?』と、手話をした。

 彼女と出会った時に『桜、好き?』って手話で初めて質問をしたけれど、その時ぐらいに手が震えた。

 僕はずっと桃音ちゃんを想って生きてきた。彼女はどうだったんだろう。
 
一緒に住む?って質問をしたら頷いてくれたから、恋人になってくれるだろうか? それとも無理だと、振られてしまうだろうか……。