「はぁ……」
車の窓にもたれかかりながら外の景色を見つめる。
桜が満開の中その木の下で写真撮影をしている華やかな女子高校生達。
女子高校生が来ているのは紺色のブレザーに赤いチェックのリボン。
それが私が今日から毎日身に付ける事になる新星(しんせい)高校の制服だ。

「ゆう 明日からは歩いて行くんだからね~。 あとよっかからない。シワになるでしょ。」
うぅ……ママ様…。
私の名前は朝日優香(あさひゆうか)。地味でパッとしない隅で読書してるような所謂陰キャだ。黒縁眼鏡も相まって更にダサいだろうな……。
「そういえば銀太くん元気??」
車を駐車しながらそう聞いてきた。もう着いちゃったのか……。
「わかんない……話してないもん…」
「え" , ゆう あんた何の為にスマホあると思ってんの??」
「……」
できる事ならLINEを送りたい。だけど……。

- ゆうちゃんっ !! -

「ほら行くわよ」
重い腰を上げて私は車を降りた。

「___入学おめでとうございます。」
生徒会長さんからの挨拶も終わり、教室に移動する事になった。
「ゆう 、さっき緑に会ったわよ。」
緑さんは私の幼なじみ。篠原銀太(しのはらぎんた)のお母さんだ。
「銀太くん1組だって 、やっぱ優秀クラスね~」
「あんた2組でしょ??」
「……ぅん…」
「ママ説明会行ってくるから1人で行きなさいね」
「……はぁい…」

ガヤガヤ ザワザワ
《え 、 インスタ交換しよ~ !!》
《まぢそれなぁ!!》《ウケる~‪w‪w‪w‪w‪w‪》
うぅ……早速グループが出来てる……。
はぁ 本でも読んでよ。
そう思った瞬間。

「ゆうちゃんっ !!」

あぁ 、 出来れば学校で聞きたくなかった声だ……。
「……ぁ…」
《ゆうちゃん ?? 誰 wwww》
《たしか1組の篠原くんじゃない??》
え 、 早速銀くん噂に…… ??
《イケメン~》《インスタ交換しよ~ !!》

「ごめん… 後でねっ」
《えぇ~ いいじゃ~ん》
私は知らんぷりして教室を出た。



「ここの図書館最高じゃん……」

暖かい日差しとたくさん本の匂いで溢れた空間。
絶対図書委員会になろ。

ガララッ

「ビクッ」
「あれ、誰?? あ、1年生??」
「……コクコクコクコク」
「……うっそ…激カワ…」
激カワ ??!! あ 、激ハラ?? 激的にキモすぎハラスメントみたいな……。
「本好き??」
先輩…??は椅子に腰掛けて言った。
「…コク」
「そっか じゃあ図書委員なりな」
そう言ってふんわりと笑った。
あまりにも綺麗な顔で一瞬どきっとしてしまった。
「俺 、2年の椎名俊平(しいなしゅんぺい)ね。俊ちゃん先輩でよろ」
「椎名…先輩」
私にはハードル高すぎます……。
「うっ…ぶれないねぇ~…俊ちゃん先輩悲しい……」
名乗り返すのが礼儀だよね……。
「朝日優香です……。」

「ゆうちゃん??」
ドアの所に銀くんが居た。嘘いつのまに??
「ぁ……」
「…優香ちゃんの知り合い??」
「同級生……です…」
「" 幼なじみ " です ニコッ」
「……へぇ~」
「ゆうちゃん連れて行きますね」
「どぞどぞ またね優香ちゃん」
「はいっ……」
あ 、つい反射で……

「銀くんっ……銀くんっ !!」
ピタッ
やっと止まってくれた……。

「もうっ 、ゆうちゃん酷い!! 俺の事無視してったでしょ!!」
「うっ……ごめんなさい……」
「てかさっきの先輩距離近くないっ??!!」