……それを聞いて確かに、彼は生きているけど無事ではないのかもしれないと思った。

 気が触れてしまったのかもしれない。

 ……自分の罪に、耐えられずに。


「何してるんだよ、お前ら」


 ふいに(いぶか)しげな声が聞こえた。

 波多君だった。

 屋敷と庭園の間で道を塞ぐようなかたちになっている私たちが邪魔だったらしい。

 機嫌の悪さが表情によく表れている。

 無意識に道を開けたが、波多君は恭君に気づいていないのか、ずんずんと足を進める。


「ま、待って、あれ……」


 思わず彼を呼び止めて、恭君のほうを指差す。


「あれがどうした?」


 恭君の異様な姿を見ても、波多君の態度は変わらなかった。


「え、お、おかしいよね?」

「べつに。演じてるんだろうよ」


 そう言って波多君は恭君に近づいていく。

 私たちは顔を見合わせた。

 波多君の言葉の意味も、行動の意味も、理解できない。

 なんとなく、彼の後ろをついて行くことにした。

 そうして恭君の傍まで近づいて、やっと彼が何をしているか理解した。