「……恭が」


 水無君はそこまで言って、後は難しい顔をするだけだった。


「――死んでないよな?」


 背後の声に振り返ると、いつの間にか咲真が立っていた。


「ていうかなんで、ありすが咲真の部屋にいるの? 心配したんだよ!」


 心と水無君が驚くのも無理はない。

 私も昨日までは、他人同士で部屋の行き来はしてはならないものだと思っていた。


「後で説明する。それより恭がどうした?」

「庭園で……」


 心は目を伏せて、それ以上は言いたくないようだった。


「庭園で? 無事なのか?」

「無事かって言われると……でも、生きてる」


 水無君の物言いはあまりにわかりにくかった。

 咲真も自分で見たほうが早いと判断したようで、すぐに部屋を出て庭園に向かうことにした。


「ねえ咲真、なんでありすを部屋に……」


 階段を駆け下りながら、心がそんなことを聞いていた。

 咲真は「べつに」なんて言って誤魔化している。


「ありす」

「なに?」


 水無君に呼ばれて、私は足を止めないまま彼を見る。

 その顔があまりに真剣だったので、すこし面食らった。