そうなると『二十二時になったら良い子はおやすみの時間』というのも、そうして夜に私たちを部屋に閉じ込めて、庭園の『片付け』なんかをするためなのだろう。

 ……なんて決めつけて外を出歩いて、何かあったら困るけど。

 他にも何か、見落としていることがあるかもしれない。


「出たよ」


 ……せっかく頭が冴えていたのに、石鹸の匂いを(まと)った咲真のせいで、思考はリセットされてしまった。

 何となく私が先に入るのは恥ずかしくて、咲真に先にシャワーを勧めた。

 でも結果として、彼の使った痕跡のあるシャワー室に入るのもそれはそれで恥ずかしい。


「何、躊躇(ためら)ってるの? ……一緒に入ってあげようか」

「――ばか」


 いじわるそうに微かに口角を上げる咲真を一蹴(いっしゅう)して、シャワーを浴びる。

 さっぱりして、気持ちがいい。

 シャワーを終え、洗面台の前で髪を乾かす。

 ドライヤーもあれば、歯ブラシもある。

 パジャマ数着、タオルも数十枚はある。

 ……こんなに準備がいいのなら、しばらく経った頃には清掃とかもしてくれたりするのだろうか。

 そんなことをふと考えて、ぞっとした。

 しばらく、なんてーーそう思ってしまった自分が恐ろしい。

 私たちは明日にでもここから逃げなければならないんだ。

 部屋では、ベッドで咲真が寝息を立てていた。

 ……疲れているのだろう。

 悪意のひとつも感じられない子どもみたいな顔で眠る咲真を見ていると、つられて眠くなってきた。