「――どうして?」

「本当はさ……わかってるだろ?」


 咲真に言われて、否定も肯定もできなかった。


「……なんて、冗談だよ、ごめん」


 咲真は元から、表情が乏しい。

 けれど私は、みんながわからなくても私は、咲真のわずかな表情の違いで何を思っているかわかる。

 わかるーーつもりだった。

 でもたった今、その自信は消えて無くなりそうだった。

 ……咲真が、心の奥底で何を考えているのかわからない。

 私が何も言えないでいるうちに、気づけばいつの間にか部屋の前まで来ていた。


「……おやすみ」


 何となくそんな咲真に気まずさを感じてしまい、そんな言葉だけをぽつりと呟いて、ドアノブに手をかけた。

 しかしその手の上に、咲真の手のひらが重ねられた。


「――今日はさ、一緒に寝よう?」


 咲真が何を言っているのかわからなかった。

 だって、部屋には自分以外入れてはいけない決まりになっている。

 破れば、頭のおかしい犯人に何をされるかわからない。


「それは――」


 私が言いかけた言葉は、途切れてしまった。

 それは、咲真に強く抱きしめられたから。