「本当によかった。こうやって話せて。二人ともありがとう」

「ううん、私こそ」

「私も少し前向きになれたよ……あ、そういえば、そろそろ部屋に戻らないと、十時になっちゃうかも」


 心に言われて、思い出した。

『二十二時になったら、良い子はおやすみの時間』

 あのカードの不気味な文面からして……時間を過ぎて出歩いているのはよくないだろう。


「じゃ、帰ろっか?」

「あ、私、あと一回だけ……あの曲、弾いてから帰るね」


 そう言う千結に手を振って、私と心は音楽室から出た。

 ホールの時計は二十一時半を指している。


「あれ?」


 ふいに心が私の後ろのほうを指差した。


「あ、バレた」


 振り向くと、そこにいたのは咲真だった。

 食堂のドアにもたれかかって、腕を組んでいる。