「私ね、本当は、もういいやって思ってた。大切な人を失って、もう頑張れる気がしないって。……まだ、みんながいるのにね」

「千結……」

 なにか言いたいのに、言葉が出てこない。

 気持ちは痛いほどわかるけど、軽々しく共感の意を伝えることなんてとてもできない。


「でもね」


 けれど千結は、私の不安を切り裂くように明るく笑った。


「やっぱり、ちゃんとしなきゃダメだって、二人と話して思った。……みんな、バラバラになりかけてたけど、頑張ろうとしてるんだから。だから、私、もう泣かない。白羽部長と祐奈……それに桃矢君に、申し訳ないから……」


 それは、大人しくて引っ込み思案な千結からは聞いたことのないくらい、ハッキリとした声だった。

 凛とした眼差しは、未来を見据えているのだろう。

 そんな千結を見ていると、私も頑張ろうという気持ちが自然に湧いてくるようだった。


「うん、頑張ろうね!」


 そう言って、私たちは笑い合った。