もう、無理だ。

 もう、遅い。

 こうなってしまっては、祐奈はもう、救えない。

 胸が張り裂けそうだけど、これは私の、私たちのせいで起きた結果だ。

 目を逸らすことは、許されなかった。


『処刑の準備が整いました。庭園にお集まりください』


 そんな放送が流れると、すぐに水無君と心が屋敷から出てきた。


「ゆ、祐奈……!?」

「どうして祐奈ちゃんが……」


 戸惑う二人に、誰も弁明しなかった。


「……な、……てやる」


 祐奈が何か呟いている。

 ――仮面の一人が、ギロチンの刃を落とそうとした、まさにその瞬間。


「――あんたたちみんな、呪ってやる!」


 そんな金切り声と共に、祐奈の首は()ねられた。

 私はその瞬間を、生涯忘れないと確信した。

 私たちの決断で、人の命を奪った瞬間を。

 あんなにも恨みの(こも)った、断末魔を。

 千結は「ごめんね」という言葉をうわごとのように繰り返している。

 ……どんなに謝っても、もう祐奈には届かない。

 今、私たちが願うべきなのは、ハートの女王の正体が確定することだけだ。

 どうか、彼女がハートの女王でありますように。

 そんな願いはきっと、多くの保身を(はら)んでいる。

 祐奈はハートの女王だったから仕方ない、そう言いたくて仕方がない。

 ――しかし、不快なあの声は。

 あの耳障りなノイズと共に。


『ダイナが処刑されました』


 白々しいほどの嘲笑で、私たちの祈りをかき消した。