波多君は私の手を振り払う。

 祐奈の整った顔立ちは、涙でその面影すらなくしている。


「こいつを処刑する!」


 波多君が祐奈を引きずりながら叫ぶと、待ってましたと言わんばかりの速さで屋敷の扉が開いた。

 そこからは、見覚えのある仮面の集団。

 相変わらず物騒な銃をこちらへ向けながら、祐奈のほうへ向かっていく。


「嫌だ、やめてよ! 助けて、誰か――!」


 祐奈の叫びもむなしく、彼女の体は仮面に引き渡された。


「嫌……なんで……」


 仮面たちに両脇を抱えられた祐奈は諦めたのか抵抗をやめ、ただ引かれるままに歩を進めている。

 ――ドクン。

 自分の心臓が脈を打つ音が聞こえる。

 本当にこれでよかったの?

 死ぬのを――殺されるのを受け入れようとしている祐奈の姿に、私の思いは揺らぐことをやめてはくれない。

 その間にも、祐奈はギロチン台へとその頭をセットされていた。


『もう、無理だろ』


 波多君の声が、頭の中を巡る。