「ゆ、祐奈、私……っ」


 千結は泣くばかりで、それ以上言葉を発さなかった。

 ……私は……私は、祐奈を――。


「ありす、咲真! 信じてよ……」


 祐奈に言われても、何も言うことができなかった。

 それは咲真もきっと同じで、唇を噛んで俯いている。


「……処刑だ」


 波多君の、二度目の台詞。


「嫌だ、ねえ、待ってよ、ねえ!」


 祐奈は波多君に腕を掴まれて、無理やり引っ張られていく。


「千結!」

「祐奈、ごめん、ごめん……っ」


 祐奈と波多君が千結の傍をすり抜けて、私の横を通り過ぎようとしたとき。


「――何だよ、今さら」

「ありす……」


 私はほぼ無意識に、祐奈の手を掴んでいた。

 ――やっぱりこんなのよくない、処刑なんてしてはいけない!

 言うべき言葉は喉の奥で突っかえてしまい、どうしても声にならなかった。


「もう、無理だろ」


 波多君が吐き捨てた言葉は、私の心境をすべて理解して言ったのだろうか。

 頭のどこかではわかっていた。

 もう、心の底では祐奈を信じてなどいないことを。