「波多君、それは――」

「何だよありす、お前もグルか?」


 鋭い眼光を向けられて、私は思わず黙り込んでしまった。


「待ってよ! 私、ハートの女王なんかじゃない!」

「……散々時間を浪費して、散々考えて、もうわかっただろ。ハートの女王かどうかなんて、証明しようがない。でもそいつを処刑しないと、ここから出られない」


 波多君の言うことは、何一つ間違っていない。


「ど、どこかに出口があるかもしれないでしょ!?」

「だから、そんな都合のいい話は、ただの夢だってわかったろ? 出口なんて存在しない! だったら怪しい奴から潰していく、それしかこんなふざけた場所から出る(すべ)はねえんだよ! 俺はこんなところで一生暮らす気なんてない、お前らはどうだ!? ここで仲良しごっこして、死ぬまでずっと閉じ込められて終わりたいのか?」


 ……言い返すことが、できなかった。

 言い返すも何も、彼は間違っていなかった。

 荒々しい物言いだけど、突きつけているのは正論だ。


「――僕も、そう思う……処刑、すべきだよ」


 恭君は、まるでひとりごちているような小ささの声で言った。


「ねえ、みんな、信じてよ! 私は、私は違う! ねえ千結、千結なら信じてくれるよね!?」