「ちょ、ちょっと待ってよ! 私、衣純と仲良くなんて……」


 否定する祐奈だったが、その声は徐々に小さくなっていった。

 それはつまり、否定しきれていないということ。

 それを証明するように、その表情には迷いが見られる。

 ……祐奈を庇うことはできなかった。

 だって、この中で祐奈だけは、衣純ちゃんに声をかけて一緒にいるところを見たことがある。

 あれだけ彼女に関わっていた祐奈はきっと、『傍観者』なんかではないと思う。


「……今思えば、部活に誘ったのも、君だったよね」


 恭君がそう言って、私も思い出した。

 『アリス部』に入らないかと、声をかけてきたのは祐奈だった。

 白羽部長が私を気にかけてくれているとは言われたが、直接スカウトしてきたのは確かに祐奈だ。


「あれは、白羽部長に言われて……! 待ってよみんな、本気で私を疑ってるの!?」


 狼狽える祐奈のことを、疑わない理由が思いつかなかった。

 ――疑いたくなんてない、私たちは仲間なのだから。

 そんな思いはいつしか、ハートの女王を見つけなくてはという思いにかき消されようとしていた。


「祐奈……私、信じたいよ……でも、どうすればいいかわからない。だって、みんなが今言ったこと、全部本当でしょ……?」


 小さな声を零した千結は涙ぐんでいる。


「ち、違う。私、仲良くなんてしてない! 衣純と一緒にいたのは、先生からよく思われようとしてただけで、部活だって全部白羽部長に言われたから――」

「処刑だ」


 祐奈の言葉を遮って、波多君は鋭い視線と共に射貫くように言い放った。

 冷たい言葉を、冷たい響きで。

 信じるべき仲間に向けて、彼は言い放った。