「――何なんだよ、じゃあ、いじめのことを知ってる奴は全員殺すとでも言うつもりかよ、あの根暗女は」

「は、波多君、あんまりそんなこと言わないほうが……」


 恐る恐るといった感じで、大人しくしていた千結が言った。

 確かに、ハートの女王が衣純ちゃんの味方であれば、彼女の悪口なんて安易に言えば処刑されてしまうかもしれない。

 処刑――その単語により、桃矢君の無残な姿を思い出す。

 いつ、誰の手によって、自分がああなるかもわからないのだ。

 この中の誰かがそのタイミングを今か今かとうかがっているのかと思うと、怖くて疑わしくてたまらなくなる。

「……今僕たちがこうなってるのが、あの子の復讐だとするなら、犯人が、あの子の味方だとするなら、やっぱり僕たちの中のイレギュラーがハートの女王なんだよ」


 恭君の言葉に、反論はできなかった。

 私たちの中で、『違う』一人。

 中学校や衣純ちゃんに関することで、みんなと違う誰か。

 ――私たちはみんな同じ、傍観者だった。

 ……けれど本当にそうだっただろうか。

 本当にみんな、同じように衣純ちゃんを見ているだけだっただろうか。

 そんなふうに思いを巡らせて――ひとりだけ、思い当たってしまった。

 ……あの子だけは、彼女の味方だったのではないか、と。


「ーー祐奈、お前、あいつと仲がよかったよな?」

「え……」


 波多君の一声で、祐奈にみんなの視線が集まる。